谷藤特許事務所の未来模索ブログ

いつも未来を模索しているちょっと変わった弁理士のブログです。突っ込み大歓迎です。一緒に未来の巨大ブルーオーシャンを先取りしませんか。

先読み式イノベーション:欲求充足のダイレクト化の法則

 わざわざ羽ばたいて飛ぶ飛行機を造ってもしかたがない

  テクノロジーの強みは、人間が欲する欲求に的を絞ってそれをダイレクトに叶えることに特化できる点です。分かりやすい例えを示します。鳥は飛ぶことができますが、動物という制約が起因して羽を羽ばたかせることでしか推進力を得られません。一方テクノロジーは動物という制約がないため羽を羽ばたかせることによる推進力に限定されません。その結果、早く飛びたい、遠くまで飛びたい等の人間の欲求をよりダイレクトに叶えるための推進力、すなわちプロペラの回転による推進力、ジェット噴射による推進力が開発されました。これを「欲求充足のダイレクト化」と呼びましょう。

  或る欲求を充足するためのテクノロジーを開発するにあたっては、この「欲求充足のダイレクト化」というテクノロジーの強みが十二分に発揮できるように開発すべきです。

 例えば、メタバース(コンピュータによって生み出されてインターネット上に存在する仮想世界)は、現実の世界という物理的制約から解放され、ユーザの欲求を最短距離で達成する機能だけに特化した世界に進化していくことが予想されます。逆に言えば、現実世界でできることを仮想世界で同じように行なっても、なんの価値もないということです。例えて言えば、わざわざ羽ばたいて飛ぶ飛行機を造るようなものです(却って面白いかも。笑)。

  特に、前々回の「先読み式イノベーション(その2)」と欲求充足のダイレクト化の法則との組合せが重要です。「先読み式イノベーション(その2)」での教訓は、「ヒットするイノベーションを開発するには、何が目的(根底的欲求)で何がその目的を達成する手段(行動パターン)であるかを見極めることが重要」でした。この教訓で見極めた「目的(根底的欲求)」に対して欲求充足のダイレクト化の法則を適用することにより、イノベーションが生まれます。

 スーパーにやかんを購入しに来たお客を見て、その購買行動の根底に「いつでも手軽に熱湯を手に入れたい」という目的(根底的欲求)があることを見抜き、そこに「欲求充足のダイレクト化の法則」を適用すると、瞬間湯沸かし器というイノベーションが生まれます。