谷藤特許事務所の未来模索ブログ

いつも未来を模索しているちょっと変わった弁理士のブログです。突っ込み大歓迎です。一緒に未来の巨大ブルーオーシャンを先取りしませんか。

先読み式イノベーション:仮説検証法

 未来型ブルーオーシャンを予測する際に重要なことが、或る現象が起こったときになぜそのような現象になったのかのとどのつまりの原因(深層原因)を追究することです。例えば「若者の消費離れ」や「若者の草食化」という現象が生じていますがその深層原因はなにかを追究しなければなりません。その深層原因が分かって初めてその原因にピントが合ったイノベーションを開発できます。

 

 深層原因の追究に有用なテクニックとして「仮説検証法」があります。

 原因を追究するための仮説検証法とは、或る現象が生じたときにその原因についての仮説を立て、その仮説に反する現象(反現象と称する)を探し、見つかれば仮説が間違っているためにその反現象にも矛盾しない新たな仮説を立て、これを反現象が出て来なくなるまで繰り返す思考法です。

 

 分りやすい例えを示します。鳥はなぜ空を飛ぶことができるのか、その深層原因(本質的理由)を仮説検証法により追究してみましょう。

 仮説1:深層原因は羽を羽ばたかせているためである。

 反現象:真空の空間ではいくら羽ばたいても飛べない。

 仮説2:羽ばたくことにより空気を進行方向とは逆方向に移動させていることが深層原因である。

 反現象:空気を進行方向とは逆方向に移動させていないのに飛べるものがある。例えば花火。

 仮説3:空気は単なる一例にすぎず、空気のような質量を有するものを進行方向とは逆方向に移動させることによってその反作用の力により鳥が飛ぶ。

 

 このように仮説を重ねるごとに深層原因に近づくことができるのが仮説検証法です。

 それではもう1つ、前述の「若者の消費離れ」の深層原因(本質的理由)を仮説検証法により追究してみましょう。「最近の若者は車に乗らないしテレビも見ない、酒も飲まない。これじゃモノが売れない。」という嘆きをよく耳にします。このような「若者の消費離れ」は、不透明なニーズを推理する上で重要なテーマです。これを仮説検証法により明らかにしてみましょう。

 

 仮説1:以前に比べて若者が貧乏になったのが深層原因である。

 反現象:貧乏なら消費対象が生活必需品に限定されるはずだが、例えばスマートフォンソーシャルゲームのアイテム等は惜しげもなく消費する。

 仮説2:若者のニーズが金銭的物欲から人とのつながり願望に変化した。そのつながり願望を満たす代表がSNSであり、SNSは金銭的な消費を必要としないものであるため。

 

 それでは、なぜ若者のニーズが金銭的物欲からつながり願望に変化したのでしょうか。これはかなりの難題で難しい話になりますが、未来を推測する上で重要なテーマですのでご容赦ください。

 仮説1:生まれたときからネットを通じていつでもどこでも人とつながることが可能な環境で育ったため、つながり願望が高まった。

 反現象:例えば、いつでも海外旅行に行ける環境に育った若者よりも、めったに海外旅行に行けない環境に育った若者の方が、海外旅行への願望は強い。同様に、生まれたときからネットを通じていつでもどこでも人とつながることが可能な環境で育った若者よりも、あまり人とつながることができない環境で育った若者の方がつながり願望が高いのでは。

 仮説2:例えば、電気設備が完備された環境で育った国民は電気のない環境で育った国民に比べて電気に対するニーズが高い。これは、電気のある生活に長年慣れ親しむことにより電気が生活の中に深く浸透して生活の一部となるためである。人とのつながりも電気設備と同様に長年その環境に慣れ親しむことにより生活の一部化する性質のものである。

 反現象:例えば、ラテン系の民族は電気のない時代でも電気のある時代になってからも陽気な民族性は一貫しており変化しない。同様に、人とのつながりが生活の一部化してつながり願望が高まったとしても、金銭的物欲も一貫して存在するのでは。金銭的物欲が減少した理由の説明にはなっていない。

 仮説3:マズローの欲求階層説における「自己実現欲求」は一貫して存在しており、その「自己実現欲求」を満たす具体的手段(行動パターン)が変化した。消費による金銭的物欲に走る行動パターンから、人や社会とのつながりを大切にし社会貢献する行動パターンに肩代わりされた。人とのつながりが生活の一部化したとしても「自己実現欲求」自体は一貫して存在しており、その「自己実現欲求」を満たす具体的手段(行動パターン)だけが変化した。ラテン系民族の例えで言えば、ラテン系民族の陽気性は一貫して変化しない「自己実現欲求」に対応するものであり、その陽気性を表す具体的手段(行動パターン)のみが変化した。例えて言えば、以前はリオのカーニバルではしゃぐことにより陽気性を発揮していたが、それがネット上に陽気な写真を投稿することに変化した。